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  1. 法と日常の交差点:伝説の詐欺師 ― チャールズ・ポンジ
ブログ
2026.01.28

法と日常の交差点:伝説の詐欺師 ― チャールズ・ポンジ

法と日常の交差点:伝説の詐欺師 ― チャールズ・ポンジ

古今東西の「イカサマ師」たち

 イカサマ師または詐欺師の中にも、シロサギ(素人相手の詐欺師)、クロサギ(詐欺師をだます詐欺師)、アカサギ(結婚詐欺師)、アオサギ(企業・会社相手の詐欺師)という区分があるようです。かつて、チャールズ・ポンジ(Charles Ponzi)という伝説の詐欺師がいました。彼は、シロサギまたはアオサギに分類できるでしょう。アメリカでは、たびたび評伝が出版されており、ドキュメンタリー映画も作られました。
 日本においても、三省堂のDK社編『犯罪学大図鑑』の中で、稀代のイカサマ師・ポンジを取り挙げています。最近、オンデマンド出版ですが、白樫叶真『詐欺の王 チャールズ・ポンジ』(2025年、ブイツーソリューション)という本も出版されました。ただし、日本版の評伝は、まったく参考文献を示しておらず、著者が創作した部分もあるので、ポンジの来歴については、もっぱらDK社編『犯罪学大図鑑』104頁以下を参照しました。

★DK社編(宮脇孝雄=遠藤裕子=大野晶子訳)『犯罪学大図鑑』(2017年、三省堂)

ポンジ・スキームという「錬金術」

 1903年、当時21歳のポンジは、イタリアからアメリカ・ボストンにやって来ました。その後、カナダ・モントリオールに移動した彼は、イタリア系のザロッシ銀行に勤務していたのですが、同銀行が破産したため、偽造小切手でアメリカに戻ろうとして逮捕・収監されています。そして、アメリカに戻ってからは、国際返信切手券の交換差額をネタにした投機的事業を始めました。

 チャールズ・ポンジが考案した「ポンジ・スキーム(仕組み)」は、出資者に運用益を還元すると称して、新たな出資者から資金をかき集めた上、その一部を利息または利益として出資者に回すというものです。スキームの首謀者を頂点として、最初の出資者から末端の出資者までがピラミッド型の組織となり、各階層に応じて金銭を分配する形になります。こうしたポンジ・スキームは、代表的な悪徳商法として後世に引き継がれました。友人や投資家には、多額の運用益を支払うと称して資金を集めますが、実際には国際返信切手券を換金する術も知らず、単に投資家から集めた資金を回転させていただけでした。最初のあいだは、90日で出資額の2倍になるといい、次には、45日で50%の利益が得られるといい、さらに100%の利益が得られると説明しました。最盛期には、1日あたり25万ドル、最終的には250万ドルを稼いだとされています(他の文献では、2万人から約1000万ドルを騙し取ったようです)。

★白樫叶真『詐欺の王 チャールズ・ポンジ』(2025年、ブイツーソリューション)

 しかし、彼名義の小切手が不渡りになったり、国際返信切手券の運用益が架空であるという調査結果が出たりするなどして、1920年8月には、郵便詐欺罪(mail fraud)で逮捕・告発されました。それにともない、多数の投資家はもちろん、大手の州立銀行が経営破綻に追い込まれています。なお、アメリカでは、2007年の「ダブル・シャー事件」や、2008年の「ルー・パールマン事件」など、ポンジ・スキームを運用した詐欺が続きました。2009年には、ウォール街の投資アドバイザーであるバニー・メイドフが始めたポンジ・スキームにより、多くの投資家が破産する事件がありました。詳細は、上記の『犯罪学大図鑑』104頁以下、118頁以下をご覧下さい。

イギリス・アメリカの詐欺罪

 当時のアメリカ合衆国にあって、詐欺に関する法律がどうであったかは不明ですが(ポンジの裁判例はあります→参考文献)、アメリカ法の起源となったイギリス法では、1757年に詐欺罪が法律に規定されています。その後、アメリカでも、詐欺による財産取得(obtaining property by false pretenses)は、イギリスのセフト法(Theft Act)法を引き継いで、いわゆる盗罪(領得罪)の一つとして、被害財産の価値により軽罪または重罪に区分されています。
 また、詐欺罪の成立要件は、他人を欺いたり、騙したりする意図をもって、金銭や財物などの権限を取得することであり、その中には、商品の虚偽表示なども含まれます。大雑把に言えば、英米法では、セフトという名のもとに、不法に他人の財産を奪った者は、窃盗、詐欺、恐喝および横領であるかを問わず、同じく処罰される仕組みになっています。

,,Ich-ich-Fraud(私-私-詐欺),,
 もう20年以上も前の出来事ですが、「オレオレ詐欺」が日本で話題になっていた頃のことです。研究留学のため、ドイツ・テュービンゲンに滞在していた際、大学のゲストハウス近くにある金融機関(Kreissparkasse Tuebingen)のATMに、,Ich-ich-Fraud,, というポスターが貼ってありました。ドイツ語のIchは「私(一人称)」、Fraudは英語で「詐欺」のことです。まさしくオレオレ詐欺のドイツ版といえます。古今東西を問わず、ドイツでもよく似た犯罪が発生していたわけです。

ドイツの詐欺罪

 日本の法律の模範となったドイツ刑法典には、通常の詐欺罪として「“違法な財産上の利益を自分または第三者に得させる目的で”、虚偽の事実を真実に見せかけたり、又は、真実を歪曲若しくは隠ぺいすることで、相手方に錯誤を生じさせたり、その錯誤を維持させたりして、“他人に損害を与えた者”は、“5年以下の自由刑又は罰金刑“に処する」という条文があります(263条1項)。なお、ダブルクォーテーションで囲んだ箇所は、日本の刑法典(246条)とは異なるところです。
 また、通常の詐欺罪を加重する類型として、保険金詐欺の規定がみられる一方(263条3項5号)、コンピュータ詐欺(263条a)、補助金詐欺(264条)、投資詐欺(264条a)、有償役務の不正入手(265条a)、信用取引詐欺(265条b)などについては、いずれも通常の詐欺罪よりは軽い刑罰になっています。1年以下もしくは3年以下の自由刑又は罰金刑です(ただし、一部の罪には、加重規定があります)。

中国の詐欺罪

 これに対して、中国人民共和国の刑法典では、公私の財物をだまし取った場合にも、詐欺の被害額が大きい場合にのみ、3年以下の懲役刑及び罰金刑で処罰されます。ただし、その金額が非常に大きい場合や、その他の重い情状があるときは、3年以上10年以下の懲役刑及び罰金刑となります(266条)。さらに、被害額が極めて大きい場合など、10年以上の懲役刑や無期懲役刑を定めた規定もあります。注目すべき点は、犯罪の被害額が小さい場合には、詐欺罪はもちろん、窃盗罪(奪取罪を含む)や横領罪も、およそ処罰されないことです。
 他方、これとは別に「金融詐欺」という独立した章を設けており、そこでは、集金詐欺(192条)、融資詐欺(193条)、手形詐欺・金融証書詐欺(194条)、信用証書詐欺(195条)、クレジットカード詐欺(196条)、有価証券詐欺(197条)、保険金詐欺(198条)などの規定があります。いずれも被害額が大きい場合に限って、5年以下の懲役刑又は罰金刑となりますが、加重事例については10年以上又は無期の懲役刑(上記の各条文を参照)、さらに無期懲役刑又は死刑を定めた金融詐欺(199条)の条文もみられます。

日本の詐欺罪との違い

 日本の刑法典は、詐欺罪を一律に10年以下の拘禁刑で処罰しています(246条)。電子計算機使用詐欺罪や(246条の2)、準詐欺罪も同様の10年以下の拘禁刑となります(248条)。諸外国と比べて刑の上限が10年以下と重いこともあって、通常の詐欺罪に当たるケースでも、ドイツ法を見習って「不法領得の意思」や「財産上の損害」で限定する学説がみられます。
 しかし、こうした限定を加えるとき、補助金詐欺や募金詐欺のように、相手方の反対給付がない場合には、およそ詐欺罪でなくなるという(おかしな)結論になってしまいます。なぜならば、補助金の場合、犯人の欺く行為がなくても、いずれ誰かに給付されるわけですし、募金や寄付金についても、無償の行為であって、財産上の損害を観念しにくいからです。

経済犯罪としての詐欺

 むしろ、軽微な「騙し」の事案に対しては、特別法上の軽い刑罰で足りる場合があります。ここでは、刑法典上の(重い)詐欺罪と、特別法の(軽い)「偽りその他不正の手段」という2段階構造になっているわけです。そのいずれを選択するかは、捜査官や検察官の裁量に委ねられるともいえます。詐欺罪の周辺にあるグレーゾーンを考えるならば、こうした対応にも、一応の理由があるかと思われます。
 また、昨今の特殊詐欺の現状に鑑みれば、詐欺罪の成立範囲を見直すよりは、特別法上の類似犯罪も含めて、広く経済犯罪という視点で捉えるべきではないでしょうか。たとえば「ネズミ講」や「現物まがい商法」は、かりに被害者が投資リスクを認識しており、「人を欺い」たといえなくても、法的には詐欺的商法として規制すべき場合があります。次回は、かつて悪徳商法と呼ばれた詐欺の手口を振り返ってみましょう。

〈参考文献〉

 Ponzi v. Fessenden, 258 U.S.254(1922)、木村光江『詐欺罪の研究』(2000年、東京都立大学出版会)66頁以下、139頁以下、ヨシュア・ドレスラー(星周一郞訳)『アメリカ刑法』(2008年、レクシスネクシス・ジャパン)838頁以下、甲斐克則=劉建利『中華人民共和国刑法』(2011年、成文堂)129頁以下、151頁、田中英夫編修代表『英米法辞典』(2012年、東京大学出版会)332頁、849頁、スティーブン・M・ロソフほか(赤田実穂ほか訳)『アメリカのホワイトカラー犯罪―名誉なき巨富』(2020年、成文堂)8頁以下など。

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