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  1. 法と日常の交差点:特殊詐欺 ― 詐欺だけど、詐欺じゃなかった!
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2025.12.24

法と日常の交差点:特殊詐欺 ― 詐欺だけど、詐欺じゃなかった!

法と日常の交差点:特殊詐欺 ― 詐欺だけど、詐欺じゃなかった!

詐欺罪の現在・過去・未来

 ここ数年、「特殊詐欺」という言葉が、新聞やテレビ、インターネット上で騒がれない日はありません。その認知件数や被害額は、令和の時代に入ってから上昇する一方です(下記の図①をご覧下さい)。毎日1億円の被害額(平成30年頃)だった時代から、現在では、毎日2億円と2倍になりました。特殊詐欺とはいえませんが、身近なところでは、虚偽の申請により新型コロナウイルス対策の補助金を不正に受給した医療法人が、詐欺の疑いで摘発されたニュースが続きました。

 今回のコラムでは、詐欺罪のヨコ軸として、刑法典の詐欺罪とそれ以外の罰則を概観しながら、現在の法制度を検討してみましょう。次回以降は、詐欺罪のタテ軸として、詐欺の手口やその歴史を振り返るとともに、諸外国の法律と比較しつつ、最近の犯罪傾向や今後の予防策を考えたいと思います。

★令和7年版警察白書より・図表2-32 特殊詐欺の認知件数・被害額の推移(平成25年~令和4年)

オレオレ詐欺から特殊詐欺へ

 特殊詐欺という名称は、2004年頃の「オレオレ詐欺」や「振り込め詐欺」から、その後の「架空請求詐欺」や「還付金詐欺」、「資産形成詐欺」などの多種多様な手口の詐欺を取り込んでいます。2014年頃に警察関係者が使い始めてから、一般の人たちの耳に馴染むまで、それほど時間はかかりませんでした。他方、現在では、「トクリュウ」という用語も使われています。しかし、正式には「匿名流動型犯罪」のことであり、必ずしも詐欺だけに限られません。

刑法(明治40年法律第45号)

 第246条(詐欺) 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の拘禁刑に処する。
 2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

特殊詐欺における「詐欺と窃盗のあいだ」

 刑法上、詐欺罪(刑法246条)が成立するには、「人を欺いて」=犯人が相手方をだますことで、その人に何らかの財産的処分(財物や利益の提供)をさせなければなりません。こうしたプロセスを経て犯人へ「財物」や「財産上の利益」が移転したときに完結します。これに対して、窃盗罪とは、相手方の意思に反して財物を奪い取る場合です。たとえば、スリが相手方の隙をついて財布を奪い取るとき、被害者の処分行為がないので、窃盗罪(刑法235条)となります。

(特殊)詐欺だけど、(刑法上は)窃盗だった!

 オレオレ詐欺のように、家族からの電話だと信じて送金した場合には、被害者が自分でATMを操作しており(財産的処分をした!)、詐欺罪となります。しかし、最近の特殊詐欺は、警察官を装った「架け子」が電話口でウソを言い、その後に訪問した「受け子」が、面談中に中座した被害者の隙をついて、ニセの封筒とキャッシュカード入りの封筒をすり替える手口です。したがって、被害者にはキャッシュカードを渡す意思がなく、財産的処分を経由しないため、窃盗罪の問題になります。

わずか3つの条文だけ

 そもそも、特殊詐欺という言葉は、警察がつくったものであり、刑法典の中には、そうした条文はありません。特殊詐欺の中には、上述したキャッシュカード窃盗はもちろん、恐喝罪(刑法249条)に当たる場合もあります。(実際に届いた)上記のメールをご覧下さい。すぐに送金しなければ、「家族が処罰されるぞ」と脅しており、刑法上は、脅迫を手段とした恐喝罪にもなりうるからです。さらに、詐欺という犯罪は、各時代の社会状況を反映した多種多様なものがあるところ、わが国の刑法典は、刑法246条(詐欺)、同法246条の2(電子計算機使用詐欺)、同法248条(準詐欺)の3箇条を置いているだけです。

刑法(明治40年法律第45号)

 第246条(詐欺) …省略…

 第246条の2(電子計算機使用詐欺) 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の拘禁刑に処する。

 第248条(準詐欺) 未成年者の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて、その財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させた者は、10年以下の拘禁刑に処する。

 電子計算機使用詐欺は、「前条のほか」と明記されることから、246条の詐欺罪の補充類型とされます。「人を欺いて」おらず、コンピュータ(器械)を「欺く」場合であるため、別の条文がつくられました。しかし、自動販売機にニセのコインを入れて商品をだまし取る場合は、「電子計算機」を欺いたとはいえず、窃盗罪で処罰されることになります。

特別法上の「詐欺」

 刑法典以外の特別法にも、詐欺と似ている犯罪があります。たとえば、不正競争防止法は、「詐欺、強迫その他の不正の手段」を用いた営業秘密の侵害や、原産地・品質等の偽装表示を処罰しています(同法2条1項1~4号・20号、21条)。金融商品取引法は、仮装売買などによる相場操縦を犯罪としており(同法158条・159条、197条の2第13号)、所得税法は、「偽りその他不正の行為」による脱税を処罰しています(同法238条)。また、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金等適正化法)も、「偽りその他不正の手段」によって補助金等を受ける行為を処罰しています(同法29条)。

「偽りその他不正の手段」と詐欺罪の関係

 これらの罰則は、刑法典の詐欺罪と同じなのでしょうか。たとえば「偽りその他不正の手段」によって補助金等を受給した場合は、刑法典の詐欺罪(10年以下の拘禁刑)よりも、かなり軽い刑罰となります(5年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又はその併科)。ここでは、詐欺罪よりも軽い程度の「ウソ」や「だまし」を想定したとも考えられます。

 そうだとしたら、他の特別法がいう「虚偽の申請」や「偽りその他不正の行為」なども、「人を欺い」た場合と異なるのでしょうか。また、刑法248条の準詐欺罪では、人を欺いた場合でなくても、相手方の弱みにつけ込む場合、通常の詐欺罪と同じく処罰されます。他方、冒頭に紹介したコロナ補助金の不正受給では、その多くが詐欺罪で立件されています。

あいまいな日本の刑法

 そもそも、刑法246条は、極めてシンプルな規定であるため、様々な法解釈が対立しています。また、社会生活上も許される「ウソ」や「誇張」との境界は、かなりあいまいであって、いわばグラデーションの世界ともいえます。もはや伝説になった「豊田商事事件(現物まがい商法)」でも、どこから詐欺罪になるかが裁判の争点となりました。なぜ具体的な条文に改めないのか、また、社会状況に対応した罰則を新たに設けないのでしょうか。その答えは、次回以降のコラム(続・詐欺罪)で見つかるでしょうか。

①イカサマ賭博は「詐欺」賭博です。この絵の中で、どの部分が「いかさま(インチキ)」=詐欺でしょうか?
②この本では、売買を「売り手と買い手の知的ゲーム」として、どこまでが許されたセールスであるか、どこからが詐欺となるかを説明しています。
③地面師とは、土地の所有者になりすまして、売買代金を騙し取るプロのことです。

〈参考文献〉

田崎基『ルポ特殊詐欺』(2022年、ちくま新書)、令和3年版犯罪白書―詐欺事犯者の実態と処遇―(2022年、法務省法務総合研究所)304頁以下、令和5年版警察白書(2023年、国家公安委員会・警察庁)56頁以下、佐久間修『体系経済刑法―経済活動における罪と罰』(2022年、中央経済社)など。

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