法と日常の交差点:オンラインカジノは「違法」ですか?
弊社の顧問、佐久間修氏による「法と日常の交差点」は、法律の話をきっかけに、日々の出来事や物語のワンシーンを少し違った角度から見つめてみるコラムです。
厳密な解説だけではなく、エッセイのように気軽に読んでいただける内容もございますので、お楽しみいただければ幸いです。
今回は、昨今話題の『オンラインカジノ』がテーマです。
有名人のカジノ・スキャンダル
本年2月頃から、海外のオンラインカジノを利用した芸人やスポーツ関係者が、警察の事情聴取を受けたというニュースが続きました。スポーツベッティングと呼ばれる問題も浮上しています。5月には、カジノサイトの宣伝をしていた「アフィリエイター」が、海外のオンラインカジノで賭博をくり返したとして、常習賭博罪の容疑で逮捕されました。6月には、オンラインカジノにハマっていたフジテレビの社員が、同じく常習賭博罪により検挙されています。
しかし、「オンラインカジノは違法である」と認識している人が、どれくらいいるでしょうか。ある調査によれば、国民全体の4割近くが違法性を認識しておらず、特に20代の若者は、ほぼ半数が違法でないと錯覚しているようです。その多くが「パチンコや競馬・競輪などの公営ギャンブルがあるから」と答えています。
賭博の歴史とギャンブル・フィーバー
賭博の歴史は極めて古く、日本でも、神事である京都賀茂神社の競馬(くらべうま)さえ、賭けの対象になっていたとされます。また、明治時代には、政府が軍馬養成のため、競馬による賭けを公認していた記録もあります。イカサマ(詐欺)賭博はともかく、「被害者(?)」が好んで参加したにもかかわらず、なぜ処罰されるのでしょうか。法律上も、賭博罪を「被害者のない犯罪」とみて、処罰対象から除こうとする見解があります。
そもそも、競馬・競輪・競艇に加えて、パチンコやスロットマシン、さらには、ロトくじやサッカーくじなど、公営ギャンブルが横行するなかで(ギャンブル・フィーバーともいわれます)、なぜオンラインカジノだけを問題視するのでしょうか。また、FX取引や先物取引のような投機行動と賭博行為では、どこが違うのでしょうか。偶然の事情に左右されて勝敗イコール損得が決まる点では、いずれも同じだからです。そこから、「オンラインカジノはグレーゾーン」という誤解が生じたのかもしれません。

違法な「賭博」と適法な「賭博」
従来、賭博の中でも、「著しく射幸心を煽るものは、社会の風俗を乱す」として、取締りの対象となってきました。その処罰根拠は、「国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらある」というものでした(判例による)。近年の例では、マネーロンダリングや脱税の温床となったり、暴力団の資金源になったりするほか、大量のギャンブル依存症患者を発生させています。とりわけ若年層が、いたずらに射幸心を煽り立てられて、自滅的な行動に走らないようにする法規制は必要不可欠でしょう。
他方、公営賭博である競馬・競輪や宝くじなどは、各種の法律で適法とされており、相場の変動に左右される投機取引も、その経済的効用からして、特別法によって例外的に許容されています。たとえ合理的な予測が可能な部分もあるとはいえ、最終的には、相場の変動という偶然の事情で勝敗が決まる差金授受(非現物取引)であって、刑法上の賭博罪にあたるからです。したがって、こうした法的裏付けのない賭け事は、賭博罪として処罰されることになります。たとえば、賭けマージャンや野球賭博は違法ですし、スポーツの勝敗に金品を賭ける「スポーツベッティング」も賭博罪とされます。

インターネット賭博の先例
すでに20年以上も昔のことですが、インターネット上の賭博が注目された時期がありました。また、外国のブックメーカー(賭け会社)がネット上のスポーツ賭博を開催したり、海外のロトくじを日本で販売したりする試みも話題になりました。その際、外国のサーバーにアクセスして賭博をする場合、日本の法規制が及ぶのかが問われました。しかし、賭け客が日本国内でパソコンを操作していれば、犯罪地は日本ということになります。こうした考え方は、オンラインカジノにもあてはまります。
むしろ、最近のオンラインカジノが重視されたのは、スマホなどの情報端末によりすべて完結するため、簡単にハマってしまうという特徴によるでしょう。また、一部のサイトでは、闇バイトのように、「グレーゾーン」と称して勧誘する向きもあります。そこで、本年6月には、「ギャンブル等依存症対策基本法」を改正して、オンラインカジノの場を提供したり、誘導する情報を発信したりする行為が禁止されました。現在、インターネットを検索しても、そうしたサイトの多くは、閲覧不可能になっています。
かつて明治政府が馬券の発売を公認した際、「人匹改悪策」と攻撃する世論が沸騰したとされますが、現在では、いわゆるIR法(特定複合観光施設区域整備法)でカジノを公認するなど、拝金主義が健全な国民性を侵食しているようです。
<参考文献>
宮武外骨・刑罰・賭博奇談(1998年、河出書房新社)195頁以下、佐久間修・事例解説現代社会と刑法(2000年、啓正社)251頁以下、佐久間修・最先端法領域の刑事規制―医療・経済・IT社会と刑法―(2003年、現代法律出版=立花書房)249頁以下など。
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