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2026.03.25

【コラム:法と日常の交差点】小説や映画になった詐欺 ― 伝統的な詐欺と進化形の詐欺

【コラム:法と日常の交差点】小説や映画になった詐欺 ― 伝統的な詐欺と進化形の詐欺

★写真右は、角田光代『紙の月』(2014年、角川ハルキ文庫)、写真左は、新庄耕『地面師たち』(2019年、集英社文庫)のカバーです。

「紙の月」と「地面師たち」

 詐欺を描いた小説や映画は沢山ありますが、近年の代表的作品を挙げるならば、「紙の月」と「地面師たち」でしょうか。角田光代著『紙の月』(2014年、ハルキ文庫)は、「三和銀行オンライン詐欺事件」を参考にしたようです。また、新庄耕著『地面師たち』(2022年、集英社文庫)は、「積水ハウス地面師詐欺事件」が元ネタになっています。なお、「紙の月」は、2014年に監督・吉田大八、主演・宮沢りえで映画化されており、「地面師たち」も、実写ドラマ版がNetflixで配信されました。
 そのほか、いわゆる投資詐欺を取り挙げた作品として、洋画の「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(監督・マーティン・スコセッシ、2013年)、「ビリオネア・ボーイズ・クラブ」(監督・ジェームズ・コックス、2018年)があり、邦画では、「エリカ38」(監督・日比遊一、2019年)があります。いずれも実在の人物や実際の事件を描いたもので、人間の強欲さや詐欺の手口を知ることができます。映画の詳細については、〈参考文献〉にある『映画になった驚愕の実話』をご覧下さい。

紙の月 ― 小説と映画のズレ

 この小説では、主人公の梨花が、定期預金にすると偽って老人からお金をだまし取っています。本の帯やしおりには「横領した」「横領犯」と書いてありますが、勤務先の銀行にある現金を着服したわけではありません。むしろ、偽造した預金証書を利用した詐欺(刑法246条)といえるでしょう。もっとも、顧客から定期預金として預かったお金を着服したとみるならば、横領罪といえなくもありません。
 他方、実際の「三和銀行オンライン詐欺事件」では、女子行員が銀行内のオンライン端末を操作して、自分が管理する架空人名義の口座へ送金しています。したがって、電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)となります。そのほかにも、この事件と相前後して、滋賀銀行事件(被害総額9億円)や足利銀行事件(被害総額2億円)など、女子行員による横領事犯が発生しましたが、いずれも単独犯でした。

地面師たち ― 実際の事件と違うところ

 『地面師たち』では、主人公の拓海が、ニセの土地所有者や司法書士に扮した仲間と協力して、架空の売買契約をでっち上げたうえ、土地の買主(不動産業者ら)から売買代金をだまし取っています。その際、犯人らは偽造の運転免許証や登記書類を用意して、最終の受け渡し現場に臨んでいますが、実際の「積水ハウス地面師詐欺事件」では、所有者名義の偽造パスポートを用いて「土地所有者になりすました」たようです。地面師の手口としては、単独犯はごく稀であって、売買の仲介役も含めた複数の人間が、強固なチームを組んで犯行に及ぶという特徴があります(まさに「地面師たち」です)。

投資詐欺、別名「資産形成詐欺」

 他方、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」や「ビリオネア・ボーイズ・クラブ」、「エリカ38」は、いわゆる「投資」や「資産形成」を利用した詐欺です。前者では「投資詐欺の帝王」、後者では「つなぎ融資の女王」と呼ばれた人物が、次々と顧客にクズ株を売りつけたり、架空の投資話で出資者を募ったりしています。しかも、その手口は、新規に集めた資金を配当金に回すというポンジ・スキームでした(上述した『映画になった驚愕の実話』や、前々回のコラムを参照して下さい)。これらの事件でも、ほとんどが単独犯であるか、せいぜい数名のグループによる犯行でした。その意味では、伝統的な詐欺の枠内にあるといえます。

★鉄人ノンフィクション編集部『映画になった驚愕の実話』(鉄人社、2019年)52~53頁

組織的詐欺とは何か

 これに対して、今日「トクリュウ(匿名流動型犯罪)」と呼ばれる形態は、同じく集団による犯行であっても、匿名の指示役(首謀者)が末端の手足(実行犯)を使う構造であり、仲間同士が協力する地面師たちの例とは異なります。そもそも、不動産の売買では、通常、対面取引が前提となるため、ネット上のやり取りが中心であるトクリュウとは、まったく別物です。トクリュウでは、組織のトップが全体像を把握しているのに対し、末端の従業員や受け子・出し子は、ごく一部しか知らされておらず、たとえ警察が「手足」を捕まえても、首謀者らを摘発することは難しいとされます。
 また、前回のコラムで紹介した豊田商事事件も、チームやグループによる詐欺を超えた「組織的犯罪」でした。そこで、1999年、これらの組織的犯罪を処罰するべく制定されたのが、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」、いわゆる「組織的犯罪処罰法(さらに短縮して「組処法」)」と呼ばれる法律です。また、2007年には、組織的犯罪の収益隠匿等を処罰する「犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)」もつくられました。

伝統的な詐欺と進化形の詐欺

 こうした組織的な犯行形態は、現代型犯罪の特徴といえます。特殊詐欺では、それが顕著な形であらわれます。最近の刑事裁判では、窃盗罪や詐欺罪の適用を「前倒し」することで「処罰の早期化」を図っていますが、いわゆる悪徳商法や投資詐欺の領域では、各種の複雑な取引を組み合わせた「進化形の詐欺」が少なくありません。しかも、現実の(リアルな)詐欺にとどまらず、インターネットなどを利用した「バーチャルな詐欺」が急増しています。特にSNS型の投資詐欺・ロマンス詐欺は、2024(R6)年と2025(R7)年を比較すると著しく増加しています。

 ★警察庁「特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」から抜粋しました。

また、(以前に紹介した)コインチェック事件のように、インターネットの匿名性を利用した詐欺事件も増えています。電子取引では「なりすまし」が容易であるため、ネットオークション詐欺、ネットバンキング詐欺、SNS型の投資詐欺が日常化したわけです。たとえば、著名人等になりすましたネット広告で勧誘した後、ニセのアカウントを使って投資グループに誘導して「顧問料」や「投資資金」の名目で送金させる手口です。また、結婚詐欺の進化形であるSNS型のロマンス詐欺は、相手方と対面することなく、様々な手口で被害者から資金を引き出そうとします。

さらなる進化形 ― サブスクリプション詐欺

 しかし、投資詐欺の場合、投資リスクがあることを前提とするならば、実際に損害が発生しても、ただちに詐欺とならないように、違法な「詐欺」と合法的な「だまし」の境界線が微妙であるのも、進化形詐欺の特徴といえるでしょう。さらに新しい手口として、最近、「サブスクリプション詐欺」と呼ばれるケースが増えています。たとえば、人間の思い込みや不注意を逆手にとった「ダークパターン」や、消費者契約法のスキを衝いた「無料サービス詐欺」が挙げられます。
 ダークパターンでは、ネット通販を利用する消費者が、あらかじめ入会ページにあるチェックを外さない限り、自動的に有料会員として月額課金をするように設定されています。しかも、これを解約する場合、極めて複雑な手続が必要となります。同様な方法で、1回限りの購入希望者を自動的に定期購入の申し込みに誘導したり、高額な料金プラン以外の選択が困難な構造にしたりするなど、消費者が意図しない形で契約させられるわけです。

サービス(法律上は「役務」)に係る詐欺

 また、「無料サービス詐欺」では、無料で試供品やサービスを提供した後、顧客の側が事前に解約手続をしなければ、自動的に有料の購入契約に移行する仕組みになっています。特に無形的な「役務」提供の対価として、財産的利益(月額課金など)をだまし取るサブスクリプション詐欺では、モノを取引の対象としないため、たとえば製造物責任を追及できませんし、形式上は事業者間(B to B)取引にすることで、顧客に有利な取消権を認めた消費者契約法を適用できなかったり、特定商取引法のクーリングオフ期間の経過後に、高額な請求書を送りつけたりするなど、法の不備を狙った悪質さがうかがえます。
 その意味では、伝統的な「モノ中心の法体系」に挑戦する犯行であって、しかも、継続的契約を強制することで不当な利益を得ている点では、まとめて「サブスクリプション詐欺」と呼ぶことができます。なお、ダークパターンが問題になったAmazonプライム事件では、消費者の誤認を招くほか、解約の制限という方法で不利な選択を迫るものとして、アメリカのネット事業者に対し、25億ドルの懲罰的損害賠償が命じられました。こうした手口が、刑法上の詐欺罪に当たるかは微妙ですが、ダークパターンに含まれる表示方法は、特定商取引法や景品表示法に違反するという意見もあります。

〈参考文献〉

 鉄人ノンフィクション編集部編著『映画になった驚愕の実話』(2019年、鉄人社)14頁以下、52頁以下、84頁以下、190頁以下、佐久間修「経済犯罪としての詐欺罪」山口厚ほか編『実務と理論の架橋』(2023年、成文堂)257頁以下、久田将義『特殊詐欺と連続強盗―変異する組織と手口』(文春新書、2024年、文藝春秋)15頁以下、2025年2月7日付け朝日新聞朝刊、2025年10月5日付け朝日新聞朝刊、2025年10月16日付け朝日新聞朝刊など。

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