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2026.02.26

【コラム:法と日常の交差点】詐欺の近現代史 ― 豊田商事事件

	【コラム:法と日常の交差点】詐欺の近現代史 ― 豊田商事事件

犯罪は、世(経済状況)につれ、人(犯人/被害者)につれ

 かつて「盗犯(窃盗)の時代から詐欺の時代へ」というコラムが、警察関係者の雑誌に掲載されました。それから10年近くが経過した現在、まさしく各種の詐欺的商法が氾濫しています。近現代の犯罪史をひも解くならば、実に多岐にわたる詐欺の手口がみられます。それぞれの時代に、さまざまな詐欺が流行した背景には、いったい何があったのでしょうか。

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皆さんが知っている詐欺の手口は、どれでしょうか?
 オレオレ詐欺、振り込め詐欺、架空(料金)請求詐欺、還付金詐欺、結婚詐欺、保険金詐欺、募金詐欺、取り込み詐欺、債権回収詐欺、融資保証金詐欺、リフォーム詐欺、クレジット詐欺、チケット詐欺、フィッシング詐欺、オークション詐欺、スマホ副業詐欺、資産形成詐欺(投資詐欺)、ロマンス詐欺、損害金回復型詐欺など。
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 たとえば、クレジット詐欺やコンピュータ詐欺は、クレジットカードやパソコンが登場しなければ考えられませんでした。また、特殊詐欺が様々な手口に分化したのは、ATMや電子マネーの普及と無縁ではありません。各時代の取引形態に左右されるという意味で、詐欺罪は経済犯罪の一種ともいえます。その意味で、明治時代にできた刑法典だけでは、およそ対処できないため、さまざまな特別法上の罰則がつくられました。

★黒丸=夏原武『クロサギ』全20巻(ヤングサンデーコミックス、2004年~)、同『新クロサギ』全18巻(ビッグコミックス、2009年~)。このマンガは、2003年から連載が開始されました。当時の世相を反映したものとして、資格詐欺やフランチャイズチェーン詐欺、ネット詐欺、不動産詐欺、募金詐欺、訪問販売詐欺、倒産詐欺、レンタル詐欺、住宅ローン詐欺などが描かれています。

詐欺の手口と社会環境の変化

 かつて鉄道網が整備された明治・大正時代には、「切符をなくした」と称して通行人をだます「寸借(すんしゃく)詐欺」がありました。昭和の始めには、企業や官公庁を装った架空請求詐欺もあったようです。その後、第二次世界大戦を経て、高度経済成長期には、国民の投資熱に便乗した詐欺が多発しました。列島改造論が流行(はや)った時代には、不動産をネタにした原野商法が社会問題になったほか、1980年代の土地バブルの時代にも、不動産や未公開株などを使った詐欺が増加しました。
 他方、就職難の時代には、各種の資格(講座)詐欺が目立つようになり、バブル景気が去った平成不況の時代には、当時の世相を背景にした「オレオレ詐欺」や「架空請求詐欺」、「還付金詐欺」などが横行しました。さらに、高齢化社会の到来にともない、電話を利用して金銭を引き出す特殊詐欺が日常化することで、「詐欺の時代」の幕開けを迎えたわけです。最近では、投機ブームの再来による「資産形成詐欺」や「損害回復型詐欺」などがあり、こうした手口の変遷は、各時代の社会状況を映す鏡ともいえます。

情報化社会とネット詐欺の増加

 また、近年では、情報化社会の到来により、オンライン・バンキングを利用した詐欺が増えています。キャッシュレス決済の普及は、「スミッシング」による電子マネー詐欺や、仮想通貨(暗号資産)を利用した「資産形成詐欺」につながりました。身近なところでは、電子取引の拡大に応じて、フィッシング詐欺やワンクリック詐欺があります。さらに、マッチングアプリを利用した「SNS型ロマンス詐欺」も日常化しています。
 かつて「オレオレ詐欺」が世間を騒がせたときは、被害者にATMを操作させて、犯人の口座に送金する方法が一般でした。そこで、ATMの送金額に上限を設けたり、銀行員が送金先をチェックしたりするなど、金融機関の防止策が強化された結果、かなり詐欺被害を防げるようになりました。しかし、最近では、電子マネーや暗号資産のような、金融機関を経由しない送金方法が急増しています。また、SNSを介した怪しげな勧誘や、いわゆる「成りすまし」を含めた手口の巧妙化は、素人ではウソを見抜くことが難しく、一連の組織的犯行であることから、警察による犯人の摘発も困難になっています。

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過去に登場した悪徳商法の中で、ご存知のものはあるでしょうか?
 原野商法、デート商法、点検商法、危険(です)商法、かたり商法、現物まがい商法、催眠商法(SF商法)、内職商法、アポイントメント・セールス商法、霊感商法、資格商法、会員権商法、マルチ商法、送りつけ商法、押し買い商法など。
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豊田商事事件 ― 現物まがい商法

 悪徳商法の代名詞にもなった「豊田商事事件」は、「現物まがい商法」のパイオニアといえます。そこで培われたノウハウが、その後の詐欺的商法に応用されました。現物まがい商法は、「ペーパー商法」とも呼ばれるように、高齢者や家庭の主婦などに対して、金地金を購入すると称して「純金等ファミリー証券」を交付しますが、その契約内容は、金地金の販売とその預託を組み合わせたものであり、金地金を預かって資産運用をすることで、顧客には年1割以上の高配当を約束しました。
 しかし、実際には、顧客に販売した分量の金地金を保有しておらず、およそ資産運用の目的物が存在しませんでした。同社の営業拠点にあった金の延べ棒も、「ニセモノ」でした。豊田商事事件では、高齢者を中心として全国で3万人超の被害者と2000億円以上の被害額が報告されています。刑事裁判では、会社の幹部らが詐欺罪で処罰されました(大阪地判平成元・3・29判時1321号3頁)。

天下一家の会事件 ― ネズミ講

 豊田商事が「先駆者」とされるのは、そこで蓄積したノウハウを活かして、残党らが新たな詐欺的商法を繰り返したことに由来します。また、これらの悪徳商法が頻発した背景としては、1960年代の日本が終戦後の混乱期を乗り越えて、高度経済成長時代に利益優先主義がまん延した点が挙げられます。前回のコラムで紹介したポンジ・スキームは、ピラミッド型の投資システムでしたが、これと似たものとして、日本では、「ネズミ講」や「マルチ商法」が登場しました。
 その代表格が、日本最大のネズミ講とされる「天下一家の会」であり、そこでは、入会申込者が先順位の会員に一定額の「入会金」を送ることで、後順位の会員になったうえで、新たな入会者を募る仕組みになっていました。そうすることで、次第に組織内の順位が上がり、自分より後順位の会員から多額の入金が見込めるわけです。詳細については、拙著『法律を変えた重大事件17』をご覧下さい。

各種のマルチ商法とジャパンライフ事件

 マルチ商法(連鎖販売取引)とは、販売員(会員)が新たな顧客(新入会員)を獲得することで、多額のボーナスが得られるシステムであり、新入会員により連鎖的に販売組織が拡大することを前提としています。いわば、商品売買を装ったネズミ講であって、近年では、過去にマルチ商法を繰り返した犯人が、高齢者をターゲットにして、同社の製造した高額な磁気製品を購入させるという「ジャパンライフ事件」がありました。
 この事件では、「磁気製品を会社に預けてレンタルすれば儲かる」と説明したにもかかわらず、実際には一部しか購入商品を保有せず、中間マージンをエサにして新たな契約者を募ったことで、さらに被害が拡大する結果になりました。本件は、虚偽の説明による「特定商取引に関する法律(特定商取引法)」の違反(不実告知)になったほか、詐欺罪でも立件されています。過去の悪徳商法については、下記の一覧表をご覧下さい。

★内閣府 消費者委員会の「いわゆる『販売預託商法』に関する消費者問題についての建議の概要(令和元年8月)」5頁より抜粋しました。

 これらの悪徳商法から消費者を守るために、1976年には「特定商取引法(特商法とも略記されます)」が、2000年に「消費者契約法」が制定されました。豊田商事事件を契機として新設された「特定商品等の預託等取引契約に関する法律(特定商品預託法)」も、2021年には、原則禁止を定めた「預託等取引に関する法律」に改められました。特定商取引法などでは、一定期間内の解除権(クーリングオフ)や重要事項の開示義務を規定するほか、不公正な勧誘方法を禁じていますが、悪質な事業者は「法律の抜け穴」を衝くことで、新たな詐欺的商法を続けています。

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消費者委員会 vs. 消費者庁
 2019年6月28日(金)、内閣府の消費者委員会において、販売預託商法の法律問題について報告したことがあります(第301回の消費者委員会本会議議事録参照)。当時、同委員会は、ジャパンライフ事件などに対処する刑事規制に前向きでしたが、業界寄りの消費者庁は、法改正には後ろ向きでした。国会でも指摘されたように、消費者庁の職員がジャパンライフに「天下り」していたからです。
 その後も、定期購入に係る消費者被害や、SNS型の投資詐欺・ロマンス詐欺をめぐる日弁連の法改正の提言に対して、また消極的な態度をとっているようです(日弁連新聞No.620・2025年11月1日参照)。「消費者庁」は、いったい何のために作られたのでしょうか?
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〈参考文献〉

 大山真人『悪徳商法―あなたもすでに騙されている』(2003年、文春新書)11頁以下、齋藤憲『企業不祥事事典―ケーススタディ150―』(2007年、日外アソシエーツ)33頁、佐久間修『体系経済刑法―経済活動における罪と罰』(2022年、中央経済社)274頁以下、同『法律を変えた重大事件17―事件でたどる刑事立法史』(2025年、成文堂)68頁以下、永岩慧子「マルチ商法被害の現状と法規制」法学セミナー827号(2023年)31頁以下など。

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